リストラなくして賃上げなし?雇用の流動化が社会全体の生産性の向上に繋がる。

リストラなくして賃上げなし?雇用の流動化が社会全体の生産性の向上に繋がる。

たまたま彷徨っていて、次の記事に行きつきました。

日本経済見通し:2018年1月 | 大和総研グループ

サマリーとして整理されている3項を読んでも、サブ・タイトルの「リストラなくして賃上げなし…」が謂わんとしているところが良く判らなかったので、レポート本体をつまみ読みしてみました。

リストラが社会全体の生産総額の向上につながる?

生産性の向上がなければ賃金上昇は叶わない、生産性の向上のためには「人材の最適配置」が肝要であり、そのためには雇用の流動化、具体的には解雇規制の緩和が必要と言います。全体賃金が上昇しないのは「ミドルシニア男性正規社員の昇給・昇格が遅れていることによる部分が大きい」と。

確かに役に立たない社員の解雇は、企業にとって有利ではあるけれども、それが社会全体の生産性の向上・賃金の上昇につながるのかしら…?と思いつつ読み進みます。

ここから先がちょっと目からウロコ感がありました。

 もっとも、解雇規制の緩和は企業優遇政策であり、家計にとっては賃金デフレを一層加速させる政策だとの批判もある。これについては議論を二つに分けて考えるべきだろう。すなわち、社会全体の生産総額の議論と、分配の議論の二つである(家計所得は2者の積和によって決定される)。例えば、仮に年収1,000万円を受け取りながら仕事をしない(企業収益に全く貢献しない)「ぶら下がりオジサン」がいるとしよう。彼が解雇された後、「コピー取り」の仕事で再雇用され、年収が100万円に減少したとする。このケースでは、社会全体の生産総額は100万円増える。立派な成長戦略だ。

生産性に寄与しない社員をクビにして再配置することが即ち社会全体の生産総額の向上につながるという点が、目からウロコでグッときました。

 問題は分配である。解雇によって浮いた1,000万円のコストを企業が再分配しないとする。このケースでは企業の利益が1,000万円増加し、家計所得総額は900万円減少することになる。従って、持続的な賃金上昇による内需の好循環を回し続けるには、「浮いた1,000万円のコストのうち900万円以上を企業が労働者に分配し、とりわけ生産性の高い社員に報いる」という分配を促す措置がここで必要になってくるだろう。

言われてみれば当たり前ちゃ当たり前なのですけど、これが正しいリストラで正しい雇用再配置なのだと思います。

お国の助成金漬け&支給要件が解雇を難しくしている?

いっぽうで、雇用関係・教育関連の助成金には、露骨に労働者の解雇を阻んでいて、事実僕が勤める企業も次年度のこの助成金欲しさに解雇を通告できずにいる不良社員がいます。(^_^;

以下の助成金は、その支給要件に、過去6ヵ月間、事業主都合により労働者を離職させていないことが含まれます。

  • トライアル雇用奨励金
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • キャリアアップ助成金 正社員化コース
  • キャリアアップ助成金 人材育成コース

「キャリアアップ助成金 人材育成コース」はMAX1000万の支給があります。その分を新入社員の教育費に充てられるわけで、中小企業にとっては大きな額ですし、確かにこの支給を失うことは大きいです。なのでどんなに不良社員であっても、6ヵ月間の条件に抵触する下期には社員をクビにはできない、と人事担当・教育担当から言われて、うわあ、腐ってんなァと思いましたっけ。

景気が良いせいか転職者が増え始めた感はある

ところで、雇用流動性と云う意味では、景気が良くどの企業も人材採用に動いているのか、転職者が増えているように思えますね。僕が勤める企業でも、転職を理由に辞める子がチラホラ。特に、よりステップアップした大企業へ転職していく子が数人居て、「ええええ、キミがそんな会社で内定もらえちゃうの?!」そんな驚きを呑み込みながらおめでとうと送り出しましたっけ。みんなその後頑張れているのかなァ、ちょっと心配していたりもして。

生産性の上がらない子が、給与アップの条件とともに転職する…、これは家計の総和としては良いことですけど、(やることは変わらないのに給与がアップしているので)社会全体の生産性総額を下げる行為にあたるわけで、いくら人材不足だからと云って、手あたり次第転職組みを受け入れているようだと、解雇規制がある中でのちのち困ることもあるんじゃないかなァ…、なあんて、ま、新天地で頑張れていることと祈りましょう。

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