【配当控除】利回り4.0%のJREITよりも利回り3.5%の国内株式のほうがお得?!配当控除のお得度を算数する。

【配当控除】利回り4.0%のJREITよりも利回り3.5%の国内株式のほうがお得?!配当控除のお得度を算数する。

株式やJREITに投資する目的のひとつは、配当金・分配金を得るためであります。

配当金・分配金の利回りは、それぞれの額面と配当金・分配金の額によって決まります。でも同じ利回りでも株式とJREITでは手元に残る税引後金額が異なる場合があることご存知ですか。

このことを把握しておくと、分配金利回り4.0%のJREITよりも配当利回り3.5%のほうが有利な場面(条件)があることや、配当利回り3.3%の株式に勝つためにはJREITの分配金利回りは何%であるべきか?などが確認できます。条件のひとつは「総合課税を選択した場合」なので、給与収入の無い専業主婦投資家の方やごく平均的な給与収入の方に当てはまる内容であります。

 
 

配当金・分配金にかかる税金の基礎

配当金・分配金には源泉徴収税20.315%がかかります。所得税15.315%、住民税5%です。この税率は確定申告で申告分離課税を行った場合と同様です。

いっぽう総合課税を選択した場合、給与所得等と合算した累進課税が適用されるとともに、配当控除を適用できます。

この配当控除、国内株式の場合は適用できて、REITや外国株には適用できないことご存知でしょうか。

配当控除は国内の企業にかかる法人税と株主にかかる税金の2重課税を避けるための措置ですが、REITは利益をすべて株主に渡すことを前提に法人税を免除されているため2重課税には該当せず配当控除の対象外となるのです。これは外国株の場合も同様ですね。

配当控除がある株と配当控除がないJREITの税引後利回り

配当控除がある株と配当控除がないJREITでは、仮に配当金・分配金の利回りが同一でも税引後の金額に差異があります。

総合課税の場合は累進課税となるため、課税対象所得ごとにその差異も異なるので、課税対象所得ごとに見て行きましょう。

課税対象所得が195万以下の総合課税、税引後利回り

試しに課税対象所得が195万以下の総合課税を例に確認してみましょう。ちなみに課税対象所得が195万円以下とは、ざっくり年収442万円以下の方が当てはまります。日本人の「正規雇用」における年収の中央値は430~440万円とのことなので、おおよそ半数の方がこの範囲に該当します。専業主婦で配当目的で株をやってると云うような方も該当します。

項目 国内株 国内REIT 米国株
有価証券評価額 1,000,000 1,000,000 1,000,000
・分配金 50,000 50,000 50,000
・分配金利回り 5.00% 5.00% 5.00%
外国税 5,000
外国税額控除 -5,000
国内所得税(5.105%) 2,553 2,553 2,553
国内住民税(10.00%) 5,000 5,000 5,000
配当控除(-7.905%) -3,953
税引後配当・分配金 46,400 42,448 42,448
税引後の実質利回り 4.64% 4.24% 4.24%

額面100万円の国内株・国内REIT・米国株の税引前の配当・分配金が5万円だったとします。・分配金利回りは同じ5%ですが、最終的に得られる税引後の実質の利回りは差がつき、配当控除が適用される国内株が有利ということになります。

なお、ここでは問題を簡潔にするため、米国株等の外国株にかかる外国税と外国税額控除の金額は同一としています。取られた外国税がまるまる戻ってくると云う計算ですが、実際にはそうはならないのでもう少し低い数値になるはずです。

課税対象所得が195万超・330万以下の総合課税、税引後利回り

次に課税対象所得が195万超・330万以下の総合課税を例に確認してみましょう。ちなみに課税対象所得が330万円以下とは、ざっくり年収654万円以下の方が当てはまります。

項目 国内株 国内REIT 米国株
有価証券評価額 1,000,000 1,000,000 1,000,000
・分配金 50,000 50,000 50,000
・分配金利回り 5.00% 5.00% 5.00%
外国税 5,000
外国税額控除 -5,000
国内所得税(10.21%) 5,105 5,105 5,105
国内住民税(10.00%) 5,000 5,000 5,000
配当控除(-12.8%) -6,400
税引後配当・分配金 46,295 39,895 39,895
税引後の実質利回り 4.63% 3.99% 3.99%

国内株式の場合と国内REIT・米国株との場合とで税引き後の実質利回りの差が拡がりました。

課税対象所得が330万超・695万以下の総合課税、税引後利回り

課税対象所得が330万超・695万以下の総合課税を例に確認してみましょう。ちなみに課税対象所得が695万以下とは、ざっくり年収1121万円以下の方が当てはまります。

項目 国内株 国内REIT 米国株
有価証券評価額 1,000,000 1,000,000 1,000,000
・分配金 50,000 50,000 50,000
配当・分配金利回り 5.00% 5.00% 5.00%
外国税 5,000
外国税額控除 -5,000
国内所得税(20.42%) 10,210 10,210 10,210
国内住民税(10.00%) 5,000 5,000 5,000
配当控除(-12.8%) -6,400
税引後配当・分配金 41,190 34,790 34,790
税引後の実質利回り 4.12% 3.48% 3.48%

課税対象所得が695万超・900万以下の総合課税、税引後利回り

課税対象所得が695万超・900万以下の総合課税を例に確認してみましょう。ちなみに課税対象所得が695万以下とは、ざっくり年収1362万円以下の方が当てはまります。

項目 国内株 国内REIT 米国株
有価証券評価額 1,000,000 1,000,000 1,000,000
配当・分配金 50,000 50,000 50,000
配当・分配金利回り 5.00% 5.00% 5.00%
外国税 5,000
外国税額控除 -5,000
国内所得税(23.483%) 11,742 11,742 11,742
国内住民税(10.00%) 5,000 5,000 5,000
配当控除(-12.8%) -6,400
税引後配当・分配金 39,659 33,259 33,259
税引後の実質利回り 3.97% 3.33% 3.33%

整理:課税対象所得別の国内株式・JREITの税引後利回りの差異

これまで見てきた税引後利回りの差異を見てみましょう。配当金・分配金利回り5%の場合の税引後利回りです。

分類 配当金・分配金利回り5%に対する税引後利回り
※カッコ内は税引前金額に対する税引後金額の率
課税対象所得 年収目安 国内株式(A) 国内REIT(B) 米国株式
195万以下 442万以下 4.64%(92.8%) 4.24%(84.8%) 4.24%(84.8%)
~330万以下 ~654万以下 4.63%(92.6%) 3.99%(79.8%) 3.99%(79.8%)
~695万以下 ~1121万以下 4.12%(82.4%) 3.48%(69.6%) 3.48%(69.6%)
~900万以下 ~1362万以下 3.97%(79.4%) 3.33%(66.6%) 3.33%(66.6%)

各項のカッコ内の率は、税引前金額に対する税引後金額の率を表しているので、配当金・分配金にこの率を掛ければ手元に残る税引後の金額を計算できます。

国内株式とJREITの利回りを税引後で見る

ここまで見てきて分かるとおり、総合課税を選択する場合、同じ利回りでも税引後利回りは国内株式がJREITに対して有利であることが分かります。

利回り3.5%の株式と利回り4.0%のJREIT、税引後金額はどっちが多い?

以下の条件で確認してみましょう。

  • 配当金利回り3.5%の国内株式(A)
  • 分配金利回り4.0%のJREIT(B)
  • 年収が654万以下の場合において、いずれの税引後の金額が大きいか?

国内株式(A)は利回り3.5%ですが、税引後は92.6%を掛けて3.241%の利回りとなります。

JREIT(B)は利回り4.0%ですが、税引後は79.8%を掛けて3.192%の利回りとなります。

結果、分配金利回り4.0%のJREITよりも配当金利回り3.5%の国内株式のほうが税引後に手元に残る金額は大きいと云うことになります。

JREITの利回りx%に相当する株式の配当利回りは?

JREITの利回りがx%であるとき、その利回りに相当する株式の配当利回りが把握できていると比較しやすいですね。

税引前金額に対する税引後金額の率を使用して求められます。課税対象所得が654万以下の場合、国内株式のこの率は92.6%、JREITは79.8%です。

JREITの税引後金額の率79.8% ÷ 国内株式の税引後金額の率92.6% ≒ 0.8618

なので、JREITの利回りをxとするとき、国内株式の利回りは 0.8618x であればJREITと同様の税引後金額を手にすることができると云うことです。

ここでJREITの利回りxを4.2%とすると、0.8618×4.2%=3.61956% の利回りの国内株式が税引後金額で釣り合います

分配金利回り3.55%のJREIT⇒配当利回り4.22%の株式に乗り換える意義

昨今のJREITの好調によって、JREITの投資口価格は上昇し利回りは低下しています。いっぽう国内株式は下落して利回りが高まっています。

そこでJREITを売り、国内株式に替えることで利回りをアップする活動を徐々に進めています。

これは税引前利回りで見ても有効な買い替えでありますが、税引後利回りで見るとさらに有効であることが分かります。

  • JREIT 3.55% × 79.8% = 税引後利回り2.8329%
  • 国内株式4.22% × 92.6% = 税引き後利回り3.90772%

※いずれも課税対象所得が654万以下の場合を想定

税引後の利回りでは実に利回りで1%以上の差が付くのです。

こういう点もあってJREITを株式に替える作業をゆっくり進めています。配当重視の「毎月配当」エリアのポートフォリオを主に専業主婦である嫁の口座で構築する選択も、税引後の金額を意識したものです。

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