すでに確定申告は終わったものと高を括っていたのですが、確定申告の期限も終わりに近い3月中旬になって、嫁の確定申告を漏らしていた ことに気付きました。
正確に言うと、嫁の確定申告は不要だと思っていたのです。
我が家はサラリーマンであるわたくし千鳥足と、専業主婦である嫁、2人の家庭です。そして嫁も証券口座を持ちいくばくかの配当収入を得ています。
我が家の場合、僕だけでなく嫁も確定申告をしたほうが得であることに気付いたのでした。気付いて早急にID・パスワードをもらいに税務署に行って、その日の夜にe-tax完了。確定申告も便利になりましたね。ウェーイ。
専業主婦/主夫の配当所得も確定申告したほうが良い場合
昨今では共働き世帯が多いと思いますが、主たる給与所得者と専業主婦/主夫と云う古くからある役割分担で生活をしている世帯もまだまだ多いと思います。そして家を預かる専業主婦/主夫が株式等の資産運用をしているケースもあるでしょう。
配当金は税金が源泉徴収されますし、株式の売却により利益が出た場合にも源泉徴収ありの特定口座を使用している場合税金が源泉徴収されます。なので、確定申告?もう税金は払ってるんだから何もしなくて良いや~♪と思うかも知れませんが、単にそう思うのは間違いです。資産運用をする専業主婦/主夫が確定申告をすることによって払った税金を取り戻すことができる場合があります。
専業主婦/主夫が配当所得を確定申告すべきか否かの判断基準は、申告しない場合とした場合で、夫婦で合わせてどれだけの控除を得られるかと云う点にあります。
専業主婦/主夫が確定申告しない場合に得られる控除
配当収入は税金をすでに源泉徴収されているので、確定申告をせずに済ますことができます。
この場合、専業主婦/主夫の所得はゼロと見做されますので、主たる給与所得者はその所得次第で、年末調整や確定申告で配偶者控除/配偶者特別控除を受けられるようになることが多いです。
専業主婦/主夫が確定申告をした場合に得られる控除
配当収入は税金を源泉徴収されているものの、確定申告をすることもできます。
専業主婦/主夫が確定申告をしても、その所得額によっては、主たる給与所得者は年末調整や確定申告で配偶者控除/配偶者特別控除を受けられる場合があります。
また、専業主婦/主夫が確定申告をすることによって、専業主婦/主夫自身が基礎控除を受けることができ、税金が還付されます。
専業主婦/主夫が配当所得を確定申告したほうが良い場合とは?
●専業主婦/主夫が確定申告しない場合に得られる控除
①「専業主婦/主夫の配当収入を申告しないことで給与所得者が得る配偶者控除/配偶者特別控除により控除される税額」
●専業主婦/主夫が確定申告をした場合に得られる控除
②「専業主婦/主夫の配当収入を申告しても給与所得者が得られる配偶者控除/配偶者特別控除により控除される税額」
③「専業主婦/主夫が確定申告することによって専業主婦/主夫に還付される税額」
としたとき、「① < (② + ③)」の関係が成り立つのであれば、揃って確定申告したほうが良いのです。難しく読めるかも知れませんが、確定申告しないで得る控除よりも、確定申告をして得られる控除の合計が多いならば確定申告をしたほが良い、と云う当たり前のことを言っています。
配偶者控除がそもそも適用されないならば専業主婦/主夫も確定申告すべし
配偶者控除に関する制度は、2018年から大きく変わりました。特筆すべき変更は「納税者本人の所得によって配偶者控除の額が変わる」点です。
所得が900万円以上になると配偶者控除が漸減していき、所得が1000万円を超えると配偶者控除がゼロになります。
配偶者控除38万円がゼロになると云うことは、総合課税の税率を20%としたときに、76,000円の節税枠がゼロになってしまうと云うことです。
さきほどの数式「① < (② + ③)」がつまり「0 < (② + ③)」となりますから、②「専業主婦/主夫の配当収入を申告しても得られる配偶者控除/配偶者特別控除により控除される税額」もしくは③「専業主婦/主夫が確定申告することによって専業主婦/主夫に還付される税額」が1円でもあるなら、専業主婦/主夫も確定申告したほうがお得と云うことになります。
つまり、給与所得者の所得が1000万円を超えていて、かつ専業主婦/主夫に配当収入があるならば、専業主婦/主夫も確定申告を行うべきです。
配偶者控除・配偶者特別控除の控除額の決まり方
配偶者控除(配偶者の所得が38万円以下の場合の控除)、あるいは配偶者特別控除(同38万円を超える場合の控除)の控除額は、控除を受ける納税者本人の所得金額と、配偶者の所得金額とによって下表により求められます。
配偶者控除/配偶者特別控除額 | 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | |||
---|---|---|---|---|
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1,000万円以下 |
||
配 偶 者 の 合 計 所 得 金 額 |
38万円以下 | (ア)38万円 | (イ)26万円 | (エ)13万円 |
38万円超、85万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 | |
85万円超、90万円以下 | 36万円 | (ウ)24万円 | 12万円 | |
90万円超、95万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 | |
95万円超、100万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 | |
100万円超、105万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 | |
105万円超、110万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 | |
110万円超、115万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 | |
115万円超、120万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 | |
120万円超、123万円以下 | 3万円 | 2万円 | (オ)1万円 |
この表に収まらない額の所得を給与所得者、あるいは専業主婦/主夫が得ている場合、配偶者控除、配偶者特別控除は0円となります。つまり、給与所得者の所得が1000万円を超えるか、専業主婦/主夫の所得が123万円を超える場合ですね。つまり前項の「配偶者控除がそもそも適用されないならば専業主婦/主夫も確定申告すべし」のケースに該当します。
専業主婦/主夫が配当収入を申告することで得する実例
上の表を使って、いくつかの例をもとに、縦横の条件がクロスする枠を見てみましょう。
給与所得者の所得が850万円、専業主婦/主夫の配当所得が10万円の場合
表中の(ア)に該当する場合です。
専業主婦/主夫が確定申告しない場合
専業主婦/主夫の配当所得を確定申告せず、申告不要制度で片づける場合どうなるでしょう。
給与所得がある側のみが確定申告をします。確定申告によって配偶者控除38万円が付きます。38万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、76,000円の節税効果があります。
専業主婦/主夫が確定申告する場合
専業主婦/主夫が確定申告をするとどうなるでしょう。
まず、給与所得がある側の確定申告です。専業主婦/主夫の配当所得が10万円なので、配偶者控除38万円がそのまま付きます。38万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、76,000円の節税効果があります。ここまでは確定申告しない場合と一緒です。
次に、専業主婦/主夫の側の確定申告です。10万円の配当に対して源泉徴収されている所得税は、15,315円(10万円×15.315%)でした。しかしながら、確定申告をすると、配当所得10万円に対し基礎控除48万円が所得控除されます。この時点で全額所得控除なので、税金はゼロ。源泉徴収されていた15,315円が全額還付されます。
つまり、専業主婦/主夫が確定申告することで得た15,315円がお得になりますね。
給与所得者の所得が920万円、専業主婦/主夫の配当所得が90万円の場合
専業主婦/主夫が確定申告しない場合
専業主婦/主夫の配当所得を確定申告せず申告不要制度で片づける場合、専業主婦/主夫の収入はゼロと見做すため、表中の(イ)に当てはまります。配偶者控除26万円が付き、26万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、52,000円の節税効果があります。
専業主婦/主夫が確定申告する場合
専業主婦/主夫が確定申告をするとどうなるでしょう。
まず、給与所得がある側の確定申告です。専業主婦/主夫の配当所得が90万円なので、表中の(ウ)に該当します。配偶者特別控除24万円が付きます。24万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、48,000円の節税効果があります。38万円を超えてもゆるやかに控除がある、良い制度ですね。
さらに、専業主婦/主夫の側の確定申告です。90万円の配当に対して源泉徴収されている所得税は、137,835円(90万円×15.315%)でした。しかしながら、確定申告をすると、まず配当所得90万円に対し基礎控除48万円が所得控除されます。所得90万円の方の総合課税の所得税率は5%なので、税額は(90万-48万)×5%=21,000円です。源泉徴収されていた額から137,835-21,000=116,835円が還付されることになります。さらに、配当収入の中に配当控除の対象となる額が含まれているのであれば、さらに還付額が膨らみます。
48,000円+116,835円、節税効果は164,835円ですよ。つまり、この場合も専業主婦/主夫も確定申告したほうが断然お得です。
給与所得者の所得が1000万円、専業主婦/主夫の配当所得が123万円の場合
専業主婦/主夫が確定申告しない場合
専業主婦/主夫の配当所得を確定申告せずに申告不要制度で片づける場合、専業主婦/主夫の収入はゼロと見做すため、表中の(エ)に当てはまります。配偶者控除13万円が付きます。13万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、26,000円の節税効果があります。
専業主婦/主夫が確定申告する場合
専業主婦/主夫が確定申告をするとどうなるでしょう。
まず、給与所得がある側の確定申告です。専業主婦/主夫の配当所得が123万円なので、表中の(オ)に該当します。配偶者特別控除1万円が付きます。1万円に対する総合課税の税率が20%だとした場合、2,000円の節税効果があります。
さらに、専業主婦/主夫の側の確定申告。123万円の配当に対して源泉徴収されている所得税は、188,374円(123万円×15.315%)でした。しかしながら、確定申告をすると、まず配当所得123万円に対し基礎控除48万円が所得控除されます。所得123万円の方の総合課税の所得税率は5%なので、税額は(123万-48万)×5%=37,500円です。源泉徴収されていた額から188,374-37,500=150,874円が還付されることになります。さらに、配当収入の中に配当控除の対象となる額が含まれているのであれば、さらに還付額が膨らみます。
2,000円+150,874円、節税効果は152,874円ですよ。つまり、この場合も専業主婦/主夫も確定申告したほうが断然お得です。
専業主婦/主夫が確定申告すると損する場合
こうやって見てくると、税金の処理に関して言えば、専業主婦/主夫が配当収入を確定申告して損する場合は無さそうです。
デメリットが生じる可能性があるのは、税金の処理ではなく健康保険の扱いです。
専業主婦/主夫が扶養に入らない場合/入っていない場合には、国民健康保険に加入することになります。国民健康保険の保険料は、確定申告あるいは住民税の申告を通じて申告する所得によって決まるため、専業主婦/主夫が確定申告をすることによって国民健康保険の保険料がアップする可能性があります。
給与所得がある側の健康保険上の扶養に入っている場合には、特に変化はありません。専業主婦/主夫を被扶養者と見做す条件は健康保険組合が個別に定めています。扶養から外れない限りデメリットは生じません。扶養から外れる年収の基準は130万以上(60歳以上は180万以上)で、かつ株式譲渡益や配当等の一時収入はカウントしないと云う明記がある組合もあります。カウントするにしろしないにろ、まあなかなか届かない水準ですよね。
つまり、ほとんどの場合、配当収入がある専業主婦/主夫は、給与所得がある側とは別に確定申告をしたほうがお得!と云うことです。
嫁のe-tax用のID・PASSもらいに付き添いで税務署行き。多少並んでたけど申告書持ち込んでる長蛇の列をしり目に30分でID・PASSもらえて、さっきe-taxで申請ポイっ。楽ちん。
— 千鳥足@投資初心者 (@chidoriashi_sh) 2019年3月11日
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はじめまして!2018年から株主優待のクロス取引を始めた専業主婦です。
大変なミスに気づき途方に暮れていた今、とても知りたい情報に出会い嬉しく思っています。
図々しいのですが、いくつか質問させてください。
実は、2019年の株主優待のクロス取引にての配当還付金が還付されおらずおかしいなと思っていたらなんと
特定口座の源泉徴収(あり)にしていたつもりが(なし)に設定していたことに今頃になって気づきました(泣)
ちなみに特定口座の譲渡損益はマイナス38万円で配当金は40万円、源泉徴収税は8万円です。
この場合、所得税も住民税も申告分離課税で確定申告することにより源泉徴収分は還付されるということで
大丈夫でしょうか?
また、夫の所得が980万くらいで、配偶者特別控除は13万円のままだと思うのですが夫の方も確定申告が必要でしょうか?
健康保険は夫の会社の保険の扶養家族ですが外れたりしないでしょうか?
無知でお恥ずかしい限りですがお時間のある時にご教授いただけると助かります。
どうぞよろしくお願い致します。
みいこさん、はじめまして。コメントありがとうございます。千鳥足です。
はい、みいこさんにほかに所得が無ければ、
確定申告することで配当金の源泉徴収分が丸々還付されますね。
申告分離課税で確定申告すると所得は配当金と譲渡損益が通算されるので
みいこさんの所得は40万-38万=2万となります。
旦那様の側では確定申告はしなくて大丈夫ですし、扶養の面も心配ありませんね。
以降は少々手間が増えますし、不要なお話かも知れませんが…、
配当金が配当控除される種類のものか否かによりますが
株主優待とのことで国内の個別株式(REIT以外)と仮定すると、
確定申告を総合課税で申告して住民税を申告不要制度あるいは申告分離課税で申告すれば、
配当控除と合わせて源泉徴収分が丸々還付される上、
譲渡損失-38万を翌年度以降に繰り越すこともできます。(←ココが変わります)
この場合みいこさんの所得税算定上の所得は40万となりますが、
配偶者特別控除に変化はないので旦那様の確定申告はしなくて大丈夫ですし、
健康保険の扶養も収入130万未満が条件であるのが一般なので心配無いはずです。
詳細は旦那様が加入されている健康保険の扶養の条件をご確認ください。
千鳥足様
お忙しい中、早速のご返信をいただきましてありがとうございます!
悩んでいたところ、大丈夫とのことで安心しました。
また、もう一つの方法も教えていただきましてありがとうございます。
税金のことはさっぱりなのでいろいろな方法があるんだなともっと
勉強しないといけないと改めて思っています。
あと一つ確認なのですが、この口座とは別に他の証券会社でも取引していましてそちらでは譲渡益も出ているのですが、源泉徴収ありで完結しているので今回の確定申告には関係ないということで大丈夫でしょうか?
また、お恥ずかしいのですが、この口座は2018年のクロス取引分も源泉徴収なしで昨年は気づかず確定申告していなのですが、今年まとめてできますか?金額は同じくらいです。
私自身の確定申告は今年が初めてのことなのですが、今年から配当支払い通知書などは添付しなくてよくなったみたいですが、何も必要ないということでしょうか?
質問ばかり何度も本当に申し訳ありませんがお時間のある時にご教授いただけると助かります。
どうぞよろしくお願い致します。
源泉徴収ありの口座であれば申告しないこともできますね。
ただ譲渡益が出ているぶん税金を取られているので、
確定申告すれば基礎控除の範囲で税金を取り戻すことができます。
旦那様の側の配偶者特別控除の額と較べて検討するのが良いですね。
確定申告は5年前まで遡って処理することができます。
2018年ぶん、2019年ぶんの確定申告書を2つ提出する形になりますね。
配当支払い通知書の添付は不要になりました。
ただ源泉徴収なしの口座の配当については、支払い通知書の内容を
まるまる転記レベルで確定申告書に記載する必要がありますけどね…笑
千鳥足様
お忙しい中、ありがとうございます。
ブログを何度も読ませていただき勉強しているのですが、
私の場合、
全ての証券会社の譲渡益を合算するとマイナスになるので、記事の
「給与所得者の所得が1000万円、専業主婦/主夫の配当所得が123万円の場合」を参考に
所得税は総合課税、住民税は分離課税で申告するというのがベストだと
理解しました。
確定申告は初めてのことなので敷居が高いですが、頑張ります!
これからもブログの更新楽しみにしています!
何度もありがとうございました。
確定申告、がんばってください!!
申告方法が何が最適かは、
確定申告書作成コーナーで総合課税/申告分離課税を切り替えて確認したり
自治体の住民税試算システムなどを利用して確認してみてくださいね。
額の変化が見て取れますし理解が早まると思いますよ。
千鳥足様
こんにちは~!
今年もこの記事を参考にさせていただき確定申告の書類作成しています(^▽^)
質問ですが、今回は私の配当所得が195万円、譲渡損失が100万円になります。夫の所得は今年は不動産譲渡所得があり、1800万円以上になるので配偶者控除がつかないようです。
その場合は、来年度に損失繰越のため私の確定申告は所得税は総合課税で住民税は申告分離課税ということで合っていますでしょうか?
住民税が健康保険と関わってくるのでしょうか。
お時間ある時にご教授いただけると助かります。
どうぞよろしくお願いいたします。
みいこさん、確定申告ご苦労様です。千鳥足です。
そうですね、記載の条件だけで考えると、所得税は総合課税で、住民税は申告分離課税が良さそうですね。
ただ、健康保険は、恒常的な収入が130万円以上(60歳以上は180万円以上)ある場合、被扶養者として認められません。譲渡益や配当を「恒常的な収入」と見做すか否かは明確な規定は無いようです。加入されている健康保険組合にご確認ください。住民税は申告不要制度を用いて、住民税は源泉徴収のままに留めておくこともできます。
千鳥足様
ご返信ありがとうございます。
健康保険組合に問い合わせてみます。
少しでも取り戻したいのですが、申告不要にしておいた方がよさそうですね(;’∀’)
何度もすみません。
千鳥足様の別記事で
専業主婦(夫)の収入が配当収入のみであれば195万円までは所得税が5%の税率で済みます
というのが気になったのですが、私は195万円を少し超えるのですが、その場合、高くなってしまいますか?
みいこさん
所得税額の計算方法は国税庁のページに詳しいので参照してください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
195万円までは5%、それを超えたぶんには(330万円までなら)10%の税率
がかかりますね。「少し超える」程度であれば大きくは変わりません。
上のリンク先の速算表に従い計算すると簡単に計算できます。
千鳥足様
あまり変わらないようで安心しました。
お忙しい中、何度もありがとうございましたm(__)m