【確定申告】外国税額控除は、総額で見ると、外国で徴収された分がまるまる戻るわけじゃない。

【確定申告】外国税額控除は、総額で見ると、外国で徴収された分がまるまる戻るわけじゃない。

確定申告の季節です。みなさん準備は進んでおりますか?

流行りの米国株式などを保有して配当金を得ていると、「外国税額控除」というキーワードが気になりますね。

米国株式の配当は、そもそも受け取り時に源泉徴収されているので確定申告は不要なのですが、「外国税額控除」を申請すれば源泉徴収された外国での課税分を取り戻すことができると言われています。米国株式の配当金は、現地米国で10%、国内で20.315%源泉徴収されているわけですが、「外国税額控除」はその内現地米国での10%の課税分を税額から控除してくれるというものです。

ただ、その捉え方は、少々誤解が混ざっているので、注意しましょう。

 
 

外国税額控除には上限がある

まず、源泉徴収された外国での税金が全額が戻るわけではありません。外国税額控除には上限が決まっています。

所得税における外国税額控除の限度額
= ①その年分の所得税の額 × (②その年分の調整国外所得金額 ÷ ③その年分の所得総額)

最大で総所得に占める外国所得金額の割合(②÷③)ぶんだけ所得税の額を控除できる、と云う意図の数式です。さらに、①その年分の所得税の額を掛けると云うことは、累進課税等を通じてより多くの税金を払っている人ほど控除枠が大きくなると云う数式ですね。

所得に占める外国所得金額の割合が50%であれば、所得税の50%に相当する額まで控除できます。

また、住民税については、外国税額控除の限度額の30%が控除の限度額となるようです。

住民税における外国税額控除の限度額 = 所得税における外国税額控除の限度額 × 30%

所得税と住民税を合計すると、控除の限度額は以下の数式で求めることができます。

所得税・住民税の外国税額控除の限度額
=(①その年分の所得税の額 ×(②その年分の調整国外所得金額 ÷ ③その年分の所得総額))×1.3

例として、以下のケースを考えてみます。

  • ③その年分の所得総額:800万円
  • ②その年分の調整国外所得金額:20万円
  • ①その年分の所得税の額:1,188,630円

式に当てはめてみましょう。

所得税・住民税の外国税額控除の限度額
=(①1,188,630円 ×(②20万円÷③800万円))×1.3 = 38,630円

上記例の場合、所得税と住民税を合わせて、合計38,630円を限度として外国税額控除を適用することができます。もっとも、確定申告で申告できるのは所得税だけなので、上の額にはならず、1.3倍する前の29,715円なので誤解の無きように。

外国株式の配当所得を申告すると、源泉徴収時よりも国内の税額が増える

外国税額控除の適用を申告するには、外国株式の配当金等の所得を申告する必要があります。

すでに源泉徴収されている配当金を確定申告すると云うことは、源泉徴収を無かったことにして税金を再計算すると云うことです。そうすることで国内の税金が増えることには、あまり触れている記事を見たことがありません。注意しましょう。

例えば、200,000円相当の配当収入が米国株でありました。

源泉徴収では、

現地所得税20,000円(20万円×10%)

国内所得税27,567円(180,000円×15.315%)

国内住民税9,000円(180,000円×5%)

となります。

さて、これを確定申告で申告するとどうなるでしょうか?

だいぶ以前に記事にしましたが、外国株式の配当所得は、外国税引き後の金額ではなく、税引き前の金額を申告することになります。

【確定申告】外国税額控除を申告する際の外国株の配当収入の申告の仕方【税引前?税引後?】

米国株の配当が20万円あった場合、収入金額は200,000円で申告します。そしてすでに源泉徴収されている税額として、所得税27,567円、住民税9,000円を確定申告書に記載します。

すでにお分かりのことと思いますが、源泉徴収されている額が、収入金額に対して少ないのです。例えば申告分離課税ですと、収入金額200,000に対する税金は、所得税30,630円、住民税は10,000円なのです。国内税額がおよそ11.1%の割り増しになります。課税対象の額が10%増えているのですから、そうなる理屈は分かりますね。

あれ?外国税額控除ってホントに得なの?

こうして確認してみると、あれ?外国税額控除ってホントに得するの?と怪しく思えてきます。少なくとも、思ったより得をしなさそうです。

米国株式で20万円の配当収入があった場合を例に確認してみましょう。

確定申告(※)
¥200,000 ¥200,000
外国税 ¥20,000 ¥20,000
国内所得税 ¥27,567 ¥30,630
国内住民税 ¥9,000 ¥10,000
外国税額控除 ¥-20,000
合計税額 ¥56,567 ¥40,630

※確定申告では、申告分離課税を選択し、外国税額控除を申請することとします。

源泉徴収では総額56,567円の税金が取られていました。

確定申告をして、外国税額控除を適用すると、それが40,630円で済みます。

なるほど、外国税額控除を適用したほうがお得なのは確かです。

でもその差額は、外国税として源泉徴収されていた20,000円ではなく、56,567円-40,630円=15,937円と、「外国でかかった税金を取り戻す!」と云う触れ込みには及ばないことが分かります。ここをきちんと理解しておかないと、「あれ?外国税のぶん戻ってこないんだけど??」…そんなふうに、オロオロすることになりますよ。

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