非上場株式の譲渡に関するあれこれ。同族企業の同族支配の強さを垣間見る。

  • 2019.09.05
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  • upd:2019.09.09
  • 日記
非上場株式の譲渡に関するあれこれ。同族企業の同族支配の強さを垣間見る。

勤め先でのこと。財務担当の方からある朝メールが届きました。

千鳥足さん
○○さん退職に伴い、○○さん所有の株式を千鳥足さんへ譲渡する事となりました。

What’s?!

わたくし千鳥足は非上場の中小企業に勤めています。数年前に取締役を拝命しました。ヒラの取締役で、所謂「使用人兼務役員」と云うヤツですね。普通のサラリーマンと変わりません。

思えば、すでに退任された先輩からは「役員になると数年の内に株を持つことになる。」と聞かされていましたっけ。

 
 

非上場株式の譲渡に関するあれこれ

千鳥足さん
○○さん退職に伴い、○○さん所有の株式を千鳥足さんへ譲渡する事となりました。
個人間での取引となり、○○さんへ譲渡金額を直接振り込む事となります。
改めて手続き方法はお知らせしますが、取り急ぎお知らせしました。

譲渡株式数 1,000株(100円/株)
譲渡金額  100,000円

メールの内容はこれだけ。ちょっと待てw

「譲渡することになりました」って僕の意思はどこへ?とヘソを曲げたくなるのと、10万円ぶんぽっちかよ…と鼻白む気持ちとがまずありました。

まあ10万円ぽっちですから譲渡を受けること自体はまあ良いとして、疑問点が幾つかありました。

  • 株価 100円/株は適正価格なのか。
  • 配当実績は如何なのか。配当性向のルールはあるのか。
  • 保有した後の取り扱いはどうなるのか。いつか誰かが額面100円以上で買ってくれるのか。

なお、勤め先は創業家一族が興した幾つかあるグループ企業の一角で、数年前に事業継承の兼ね合いで持株会社(非上場)を設置しています。その際に持株会社が勤め先の100%株主になりました。今回お話があったのは持株会社の株式譲渡です。

株価100円/株は適正価格か?非上場株式の譲渡の取引値

上場企業の株式の譲渡は簡単ですね。不特定多数が参加する証券取引所で値が決まり取引が行われます。

では非上場株式の譲渡はどのような取引値で行われるのでしょうか。取引値は売る側・買う側の合意に恣意的に決められます。

例えば、今回の非上場株式の場合、税法上の計算に則って算出した時価総額から求める適正価格は2,000円/株程度とのこと。それが今回は100円/株です

取引値は恣意的に決められますが、もちろん適正価格に対し高額に売れば、売り手に税金がかかります。ただし法人でも同族株主でも無い個人同士が譲渡し合うぶんには、あくまでも譲渡して得たおかねと取得したときの費用の差額に対する税金でしかありません。

(2) 一般株式等に係る譲渡所得等()の金額の計算方法
総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=一般株式等に係る譲渡所得等の金額

国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」

いっぽうで法人や同族株主が譲渡に関わる場合には、税法上の手続きによって適正価格を算出しこれに基づき税金が決まるようです。今回の譲渡に勤め先(法人)が関わらず、個人間で譲渡する手順になるのはそういう理由に拠るようです。

財務担当に確認したところ、持株会社設立時に定めた株価が100円で、譲渡する側の○○さんが取得した際の株価が100円、したがって○○さんに税金が掛からないよう100円で譲渡するとのこと。役員・社員間で株を譲渡する場合にはこのルールに則っているとのことでした。

まあ、従業員の持株会と何ら変わりませんね。

非上場株式の配当、配当性向等のルール

配当がどの程度出るのかの説明も無しに、「株式を譲渡することになりました。」と言われても「えええ…」てなりますよね。配当がどの程度出るのか、過去の実績をもとに説明を求めるべきですね。

もちろん決算報告書を見れば分かるのでしょうが、あいにく僕は親会社(持株会社)の決算報告書に興味がなくて、すでにシュレッダーにかけてしまっていました。笑

仕方ないので、「あのぅ…配当って如何ほどなんですか。」…恥ずかしさを堪えながら財務担当に訊いてみました。

回答は「1株30円、100円で30円ですから30%の高利回りですよ 笑」と。

ほうほう。これは良い。10万円の株を保有していれば毎年3万円の配当があると云うことですね。なにそれそんなに利回り良いなら、もっと分けてくれれば良いのに。

ちなみに配当性向等のルールは一切ありませんでした。創業家の思うがままに。と云うことのようです。要するに配当が極端に下がることは無いと云うことです。

保有した後の取り扱い。いつか誰かが額面100円以上で買ってくれるの?

保有した後の取り扱いは、各企業で取り決めがなされているはずです。

勤め先の企業では、退任&退職時には株を手放し、後続の誰かに譲渡すると云うのが同族企業内のルールになっているようです。

このルールはどこかに明文化されているのだろうとは思うのですが、それは見せてもらえておらず・明確に同意しているわけでもないので、退職時に「いいや譲らん!これは俺の利権である…!」とか「いいや100円では譲らん!税法上の時価に基づく株価でないと譲らん!」とゴネたりしたらどうなるのかな。闇に葬り去られるのでしょうか。いやしませんけどね。

配当の使いみち

譲渡額はわずか10万円分だし年間の配当は3万円でしかないけれども、家計を管理し・投資を始めてからの僕はおかねの重さを知っています。

年間収入3万円の増、素晴らしいじゃないですか。

いまをときめくJTの配当利回り(7%)で計算したって、年間3万円の配当を得るには43万円くらいの元手が要ります。そして非上場であるがゆえに株価は変動しません。買った額でいつか買い取ってくれることも(口頭では)説明を受けました。超高性能定期預金のようなものですね。

この3万円は、もうそのまんま旅行積立に充てて、旅行を愉しむ元手とさせていただきます。

同族企業における同族支配の強さを垣間見た

今回株主名簿を見せてもらいましたが、上位には同族である創業家一族がずらあり名を連ねています。直接企業運営に関わっていない息子・娘・孫までずらあり名簿に載っています。

総発行株式数がおよそ103万株、内94万株が創業家一族の保有。それだけの配当が創業家一族に「何もしなくても」流れていく仕組みです。「何もしなくても」は半分本当で半分は嘘。すくなくとも創業時にリスクを負っていますからね。ピケティの言う 「r > g」の式は嗚呼まさにこういうことなんだなと改めて思い知りました。

日本には同族企業が多いことはご存知ですか。上場企業でも50%以上が同族企業と言われています。富はこうやって格差を生むべく豊かな層に還流しているのです。

では僕たちはどうしたら良いでしょう。格差社会に反対するデモに参加して不満をぶつけますか。それ時間の無駄ですw

能力に長けリスクを負える人は事業を興すことに投資したほうが良いし、そうでない人は市場で取引されている上場株式を購入して株主となり、その活動成果のおこぼれを漏らさず受け取ることに励んだほうが良い。そのリスクさえも負えないならば、格差が拡がる社会の下層のほうに置いて行かれていってしまうのだなと思いました。下層のほうに置いて行かれた場合にもデモに参加している場合ではなくて、その時間を労働に充てたほうがきっと豊かさに近づけますね。

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