NTTドコモほか携帯キャリア銘柄大暴落
2018年11月1日、[9437]NTTドコモほか携帯各社の株価が大暴落しました。
[9437]NTTドコモ 前日比14.7%安。おおおおい!
[9433]KDDI も連れ安で前日比15.7%安。
[9984]ソフトバンクグループ は…、だいぶ軽微に見えるけど、前日比7.9%安。
NTTドコモが「大胆な料金プランの見直し」を発表
携帯キャリア各社の大幅安は、前日10月31日に [9437]NTTドコモ が通信料金の値下げを発表したことに因ります。2019年4~6月に現行料金に対し2~4割程度を値下げした料金プランの提供を始め、年間最大4,000億円を顧客還元すると云う内容です。
風呂敷は大きいのですが、その中身はまだ何も固まっていないようです。
菅官房長官による執拗な値下げ要求
[9437]NTTドコモ の発表が、菅官房長官による執拗な値下げ要求に応じたものであることに疑いの余地はありません。
携帯料金、4割下げ余地 官房長官「競争働かず」(写真=共同)
菅官房長官は、日本の携帯電話の料金は世界で最も高い、その家計負担が消費者心理を圧迫している、大手携帯電話各社は過剰な利益をあげており料金は今より4割下げられる、国民の財産である公共の電波を利用している事業で過度な利益をあげるべきでない、などとことあるごとに業界に圧力をかけていました。
実は同じような議論は3年前の2015年にもありました。安倍首相が「日本の携帯電話料金は高い」「家庭の支出における携帯電話代の割合を下げる」と発表したのです。ただそのときには、総務省の検証結果として、「そもそも日本の携帯電話料金は諸外国と比較して高くない」という点が確認されています。
今回の菅官房長官の要求も総務省は寝耳に水の状態だったようですから、そもそも内閣府と総務省の足並みがそろっておらず、「総務省は通信会社寄り」と云う発想が内閣府にはあるのかも知れません。
菅官房長官はその後「わが国の料金は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍程度で、高い水準だ」と指摘するなど、どうにもこうにも携帯料金を下げたい様子です。OECD発表のデータは、各国の料金を比較するにはそのサービス基準がバラバラ過ぎるとも言われていますが、その辺には特に言及がありません。
ユーザー大喜び…?株主ポカーン
料金の2~4割値下げ、利用者はさぞかし大喜びだろうと思いきや…、あれ?そうでもない様子。
【悲報】NTTドコモ「2~4割値下げへ」と発表しても叩かれてしまう / ドコモユーザーが言いたいのはコレだけだった
なんで料金値下げの知らせにユーザが怒るのか、意味がわからず読み始めましたが、長期ユーザを大事にしろと云う意見のようです。[9437]NTTドコモ の値下げ発表では値下げに関する具体案には触れられておらず、まだ新規ユーザだけ優遇されると決まったわけではないのですが…、長期ユーザにより恩恵があるプランが発表されると良いですね。
いっぽうで、株主は今回の [9437]NTTドコモ の発表をぽかーんと眺めています。菅官房長官がずいぶん粘着してくれるので、いずれは値下げせざるをえないのだろうとは思っていましたが、ずいぶんと優等生な対応の速さで驚きました。つい最近、30年ぶりに3,000円台回復…!とか喜んでいたのにね。
株主はどうすべきか
さて、10%超の含み益状態から一気に含み損を抱える銘柄に変貌した [9437]NTTドコモ 株、株主はどうしてくれるべきでしょう。菅官房長官が値下げ云々言い始めたときに国策に逆らわず売ってしまったほうが良いかなとは思いましたが、率直に言うとこんなにすぐに優等生的な反応を示すとは思っていなかったので、すでに売り遅れています。
そもそも料金改定は必定だった
菅官房長官がしつこかったとは云え、ずいぶんと優等生的な対応の速さには、菅官房長官に言われずとも料金改定を検討せざるをえない事情があったのだと思います。すでに飽和状態にある携帯電話業界に、2019年には [4755]楽天 が参入することが決まっています。[4755]楽天 は、既存携帯キャリアのおよそ半額の料金でサービスを提供するとブチ上げました。少子化日本の中で全体の利用者のパイが膨らまない中、ユーザを奪われることは死活問題です。菅官房長官の圧力が無くとも、[9437]NTTドコモ は、早晩料金プランの見直しを迫られていたのだと思います。
5Gの投資はほんとうに嵩んでいる
システム開発の業界に居ると、5G関連の投資で費用がかかることもあり、NTT系のシステム開発が細っているとも聞こえてきます。投資したぶんを回収するのに時間もかかるでしょう。
5G関連で投資が嵩んで利益率低下が見えている。ここはいっそ政府の意向を借り携帯料金プラン見直しの体で収めて、投資家のみなさんには利益率低下も許してもらっちゃおうか?的な発想は…いやいや…、さすがに無いですよね。
安定の配当収入⇒HOLDでしょ
さて、含み損まで堕ちてしまった [9437]NTTドコモ の株をどうしてくれましょう。あまり悩むこともなく、我が家ではHOLDすると決めました。
[9437]NTTドコモ には、過去一度も減配をしたことがないと云う実績があります。
携帯電話の業界には過去何度も業界全体を揺るがす潮流の変化がありました。それらの変化を受けて尚減配がないのです。これは素晴らしいことです。あるいは、[9432]NTT を親会社に持ち、その [9432]NTT の大株主は財務大臣だと云う構図に守られているためかも知れません。そもそも同社に期待しているのは値上がり益よりも配当収益のほうなので、この安定した配当が崩れない限りは保有することに何ら問題ありません。財務体質は盤石ですし、今後減配が見込まれるか?と云うと、そのような事態はまず考えられません。
むしろ株価の動きが落ち着いたところで買い増ししたいくらいです。11月2日の株価は早速リバウンドが見られましたが、買い増すのは新料金プラン導入後の決算を見てからでも遅くはないですね。
携帯電話料金値下げについて個人的に思うこと
個人的には、[9437]NTTドコモ であるものの、携帯電話のヘビーユーザーではなく、菅官房長官の言葉も今回の値下げ方針の発表も冷めた目で見ています。
携帯電話料金が家計を圧迫している…?一人1台は持ちすぎなんじゃないの?
携帯電話料金が家計を圧迫していると言いますが、そもそも一人1台、キッズにもシニアにもと持たせている家庭をどうかと思うのですよね。我が家で所有しているのは、嫁の iPhone 1台だけです。僕は会社から貸与されている iPhone があるので個人用のは持っていません。仕事以外に使わないのだもの。小さなデータ量で嫁と連絡を取り合う程度には私用でも使っていますが、多分1円も課金対象になっていないので許してください。
満員電車でスマホゲームすんのまじやめれ
大の大人が、満員電車でぎゅうぎゅうの中、スマホをかざしてゲームしているのがマジで邪魔くさいのでやめて欲しいです。ああいうゲームの通信料も「携帯電話料金」の中に組み入れられた上で「日本の携帯電話料金は高い」と言っているのだとしたら、それはもう別次元の話です。
今回「わが国の料金は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍程度で、高い水準だ」と言って世間からアホかとバッシングされたことも踏まえて、きちんと利用内容の次元をそろえた上での比較を政府なり総務省なりが取りまとめて欲しいものです。
携帯電話がなかった香ばしい時代を思い出せ
携帯電話が一般にも広まったのは僕が20歳を過ぎたころでしょうか。学生時代は一貫して携帯電話がなかったです。
恋人と会話するには毎回緊張しながら家に電話をかけ、親御さんを経由してから当人に到達していました。待ち合わせに遅刻するなど言語道断、連絡が取れずに不安なまま待ちぼうけ。遅刻して駆けつけたほうも既に帰ったのかそもそも遅れているのか?が分からず待ちぼうけ。そういうのを何度か繰り返したあと、待ち合わせの公園の鉄棒にハンカチが括りつけてあったら「待っていたけど帰るね」と云うサインにするとか、香ばしい通信手段が育っていたのを懐かしく思い出します。
あの時代に較べると、圧倒的に便利になった代わりに、圧倒的に色気がなくてつまんないよね。仕事もいつどこに居たって捕まっちゃうし。だからと言って利便性を捨ててあの時代に戻ろうと言う気はさらさらありませんが、これだけ便利になって、その利便を享受しておきながら「携帯電話料金が高すぎる」と目の色変えて訴えるのってどうなのって思います。
利益率20%は米国企業なら当たり前?苦境を乗り越えこの水準を維持するのが当たり前であってほしい
一連の菅官房長官の携帯キャリアを狙い撃ちした発言については、主に個人投資家サイドからバッシングの声があがっています。「アメリカなら利益率20%超の企業なんて当たり前、これだから日本の企業は育たない、日本はいつから社会主義国になったのか」云々。
仰ることは表向きフンフンと読めるのですけど、個人向けサービスの提供企業が値下げを検討することは、サービス拡充・利用者囲い込みと云う側面では一概に悪いことばかりではないですし、資本主義はわがままな消費者の声ゆえに育ち、淘汰されていくものだと思うので、あんまり口を尖らせて文句を言うことでも無いかなあと思います。[9437]NTTドコモ の過去IRをいくつか掻い摘んで見てみましたが、いずれの時代でも利益率20%近くをたたき出しているのですね。時代ごとにさまざまな波があったにも拘わらず。
公共性が高い事業でもありますし、料金が一般感覚から離れて高くなればバッシングされるのは当然でしょう。叩かれて叩かれて強くなる企業が生き残るのが資本主義だと思います。米国の通信事業者だって消費者の要望に長年さらされていて、対応してきたからこそ長年生き残っています。実際2017年は米国の携帯電話料金の値下げ競争が激しかったようです。世間が納得する料金でサービスを提供し、かつ高利益率も崩さない生産性、これが日本企業に求められることです。ですから[9437]NTTドコモ に置かれましても、料金値下げを明言したからには、早急な収益力回復を目指してコスト削減等さまざまな取り組みをしていただきたいですね。その上でまだ政府が利益率が高すぎる…と苦言を呈すなら、そのときには、さすがにキレて良いと思います。
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